2011年3月11日に発災した東日本大震災により、住まいを失った方、仕事を失った方は数多く、震災から８年が経った今もまだ、県内の仮設住宅で暮らす方、あるいは県外の親族のもとなどに身を寄せてもともと暮らしていた地域に戻れない方がいます。

2019年9月30日現在、宮城県内で応急仮設住宅に暮らす被災者数は129名（プレハブ住宅42名、みなし仮設住宅87名）います。また2019年10月11日現在、県外避難者数は130名います。一方、2019年2月までの宮城県内の震災関連倒産件数も、172件にのぼっており、老舗製造業の廃業なども相次ぎました。 他方、観光客の誘致などにつながる情報発信も、地域経済の活性化のために必要とされています。

女川原発は東日本大震災では大きな被害を免れましたが、発災直後から現在に至るまで運転を停止しています。 女川原発を有する東北電力は、エネルギー資源の多様性確保や発電コストなどを理由に原子力発電所を再稼働する方針です。しかし原子力発電の安全性を疑問視する声は根強くあり、リスクをゼロにすることはできないと考えられています。一方、従来の火力発電はCO2の排出、自然エネルギーは電力供給の安定性などの課題などを残しています。

福島第一原発の事故を受けて、全国の原子力発電所は原子力規制委員会により作成された新たな規制基準に則った審査に合格し、許可を得なければ再稼働することは認められません。2013年に女川原発2号機の新規制基準についての適合性検査が申請され、2019年内にも新基準への適合を認める審査結果が出る見通しです。 一方、2018年秋に市民団体が、女川原発の再稼働の是非を住民に問う県民投票条例の制定を求める地方自治法に基づく直接請求を知事におこないました。法定署名数(県内有権者数の50分の1以上)を超える11万1743筆の署名が集まり、宮城県議会に条例案が提出されましたが、村井知事は賛否を示しませんでした。県議会では自民・公明会派の反対多数で、条例案は否決され、県民投票は実現しませんでした。 原発の再稼働を決める法的権限は電力事業者にありますが、原発の再稼働の実質的な最終決定を下すのは知事になる場合が多くあります。2015年に新基準の下で初めて再稼働した鹿児島県の川内原発や、2016年に再稼働した福井県の高浜原発など、再稼働が行われたケースでは県知事の同意があったことで手続きが進んでいます。 前述の審査が通った場合、県知事の判断によって女川原発の再稼働の可否が決められる可能性が高く、県民投票の条例案を否決した県議会は県民の代表として再稼働に対し意見を示す責任が大きくなっています。

県外からの企業誘致（支社、工場など）によって多くの雇用が生まれると期待されますが、一方で本社機能を県内に移転する企業は少なく、法人税の流出につながっています。 地元企業を支援し、大きくしていくことでも雇用は生まれますが、成長には時間がかかります。宮城県は、他の政令指定都市を有する都道府県と比べ、一部上場企業など大企業の数が少ないと言われています。 また震災後の宮城県は起業率が上昇しており、経済や産業の新陳代謝につながっていますが、事業が10年継続する確率は約1割とも言われており、雇用や産業創出につながるかは未知数です。

宮城県は「富県宮城」を基本理念として掲げ、自動車関連産業や高度電子機械産業などの製造業や、ソフトウェア業やコールセンターなどの情報サービス関連産業などにおいて、重点的に企業誘致を進めています。 女川町や丸森町など、起業促進に取り組む自治体も生まれています。

宮城県は古くからの米どころと言われていますが、その他の農作物の生産量は必ずしも多くありません。また、県内の農家の数は、2005年は7万7855戸あったのに対し2015年は5万2350戸と10年間で約33%も減少しています。

県内総生産における農業の占める割合は0.9%（2016年）と、必ずしも大きくありませんが、新鮮で安全な食べ物が地域で作られることは重要と考えられています。 担い手減少による全国的な食料自給率の低下を防ぐためにも、農家への支援を手厚くすべきという声がある一方、県外や海外に輸出できるうような高付加価値な農作物を生産することで農作物の生産力・競争力を高めるという考えもあります。しかし海外出荷などを見越して新たな農作物を栽培することは農業従事者にとって簡単なことではありません。

宮城県は全国５位の海面漁業漁獲量（2017年）で、全国有数の水揚げをほこる石巻、女川、気仙沼、塩釜をはじめ、漁港を有する自治体が数多くあります。 日本の漁業は、全国的に漁獲量の減少、担い手の減少が続いています。そのような課題を解決するため、民間企業を参入しやすくし、生産性を上げて水産業を改革すべきだとする意見がある一方、企業参入や行政の介入が効果を生むか懐疑的な目線も向けられています。 また漁獲量の減少には、排他的経済水域の設定など外的な要因もありますが、持続性を度外視した乱獲の影響という指摘もあります。

宮城県は震災からの漁業復興を目指し、全国に先駆けて、それまで漁協にのみ優先的に与えられていた漁業権を企業に解放する「水産業復興特区」の仕組みを2013年に石巻市桃浦地区で取り入れました。 導入の利点として、養殖業を中心に企業の資本を導入し、生産設備の高度化や大規模化を進め、海産物の付加価値を高めたり、省力化を進めて生産性を上げたりするなど、流通販売も含めた収益の向上による若手就業者の確保などが目指されました。一方で、きめ細やかな漁業資源の管理やコミュニティ維持の側面から、民主的に利害調整を行なってきたバランスを崩してしまうとの懸念や、必ずしも漁業者の収益につながっていないという指摘も見られました。 なお漁業権の更新は5年ごとに行われますが、2018年は水産業復興特区の適用が見送られました。

人口減少に伴う水の需要の減少、施設の老朽化など水道事業が直面する課題に対応していくため、2018年に水道法が改正され、全国の自治体が行ってきた水道事業の民間企業による運営がしやすくなりました。 水道民営化を導入することにより、自治体の財政負担の減少や、民間技術による業務改善が見込まれます。 一方で、住民の生活に直結する「水」を、民間が管理することで、料金の値上げ、過疎地域へサービスが行き渡らないなど、生活を脅かす懸念があるとの声もあがっています。

宮城県は全国でも早い段階から水道民営化に向けた準備を進めています。村井知事は官民連携型の「みやぎ型管理運営方式」を提案しており、2021年度にも開始したいと考えています。この管理運営方式は、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する、いわゆる「コンセッション方式」で、事実上の民営化となります。民間企業に対し独占的な営業権を与える「コンセッション方式」は、宮城県が従来行ってきた「業務委託」よりも、民間企業の権限と運営責任が強くなります。 なお水道3事業とは「上水道」「下水道」「工業用水」の3つを指します。

広域防災拠点は、救援物資・災害支援をする自衛隊や消防隊などが集まるベースキャンプとして、被災地域への最初の中継拠点となります。支援物資の一時集積や荷さばきのスペース・へリポートも設けられます。平常時は大規模な防災訓練を行うなど、防災に関する住民への教育・育成機能も果たす必要があります。 宮城県は、仙台市宮城野区にあるJR仙台貨物ターミナル駅を移転させ、その跡地に広域防災拠点を整備する計画を進めており、その予定地の選定についての是非が問われています（詳細は「さらに詳しい補足説明」を参照）。

県は、ドクターヘリの基地病院である国立病院機構仙台医療センターにも隣接し、広い用地が確保できることからこの場所を選定したとしています。また、使用されていないときには、都市公園の広場スペースとして宮城県営球場(楽天生命スタジアム)や、仙台市陸上競技場(弘進ゴムアスリートパーク仙台)と同じエリアにある市民の憩いの場となる計画です。 一方、この地域は直下型地震が想定される長町利府断層が間近に走るため、地震が発生した際に被害を受け、十分に機能を発揮できない恐れがあります。また、国の基準から見て十分な広さが確保されていないのではないかという指摘がなされています。 なお、広域防災拠点の利用開始時期は2020年度を予定していましたが、関係機関との移転に関する協議や用地の引き渡しに時間を要しており、現時点では2023年度以降にずれ込む見通しです。

海外から国内への観光客のことをインバウンド（Inbound）といい、純粋なおもてなしの面からはもちろん、外貨獲得による地域経済の活性化という点からも注目されています。

2018年に宮城県の外国人宿泊数の伸び率が全国トップとなり注目されている一方、訪れる外国人の絶対数では全国的に見て依然低い水準にあります。 さらなる観光客数の増加のためには、認知不足、原発事故の風評被害の払拭、平泉など隣県の主要な観光地の入り口・拠点としての整備、多言語化対応など観光地としての再整備など、様々な課題があります。

二者択一ではなく、どちらも重要であるという前提の上で、より予算面などで充実してほしいと考えるほうを選んでください。

宮城県教育委員会は平成22年度から、県立高校の普通科において通学区域を撤廃し、全県一学区としました。住んでいる市町村に関わらず、自由に高校選択ができるようになりましたが、都市部の高校の人気が年々高まる一方、郡部の高校は定員割れするなどの事態も起こり、学力や学習機会の格差が広がる傾向が強まっています。

従来の学区制では、県内が5つの地区に分けられ、仙台市も大きく2つの地区に分かれていました。他地区の高校（普通科）に進学するためには3%枠など適用人数が限られる特殊な制度を利用する必要がありました。

同性パートナーシップ制度は、現在結婚が認められていない同性のカップルのパートナーシップを行政が証明するものです。性的な多様性を尊重する取り組みです。ただし、婚姻と同等の法律的な効果はありません。

日本では最初に東京都渋谷区がこの取り組みを始め、全国の市区で導入が進んでいる他、都道府県では茨城県が2019年7月から「いばらきパートナーシップ宣誓制度」を実施しています。一方、伝統的な家族観などの観点から制定に慎重な声もあがっています。

村井嘉浩宮城県知事は、2005年の知事選で当選、就任し、2017年には4期目の当選を果たしています。賛否の分かれる独自の政策を打ち出すなどしながら、これまで震災復興や企業誘致に一定の手腕を発揮してきました。

2016年に実現した仙台空港の民営化につづき、県議選後には水道民営化に向けた条例改正案を提出予定です。一方、4期目に入った昨年10月、気仙沼の防潮堤施工ミス問題では、謝罪するも、費用面などから造り直さない判断をしました。